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モチーフ1.『冒険ダン吉』と『建築家とアッシリアの皇帝』

前回紹介した神内良一氏の原動力となった『冒険ダン吉』は講談社の少年向け雑誌「少年倶楽部」で連載された島田啓三による漫画作品で、戦前に流行しました。南の島に流れ着いた少年ダン吉とネズミのカリ公が、島の王様となって、文明の知恵を活かしながら蛮行(島の原住民)や自然を組織し、支配していきます。

『建築家とアッシリアの皇帝』はスペインの劇作家フェルナンド・アラバールによる不条理劇です。飛行機で島に不時着したアッシリアの「皇帝」が、島の原住民である「建築家」に文明を教え込みます。「皇帝」が文明を教育しようとする一方で、「建築家」は自然を動かす力をもっていたりと、ユニークでナンセンスなやり取りが繰り広げられます。

両作品とも、未開の島で王を名乗り文明を教え込むという設定が酷似しています。しかし『冒険ダン吉』には現代からすると差別的な表現が過分に盛り込まれており、戦前の時代状況において南の島を支配していくことは子供たちにとっての憧れと重なりました。『建築家とアッシリアの皇帝』では、文明で他者を支配しようとするやり取りが滑稽に描かれています。